こんにちは、リンス(@Lins016)です。
今回は確率における独立について学習していこう。
独立とは
教科書には「独立な試行」って言葉が掲載されているよね。この「独立」って言葉についてきちんと整理して理解することが、確率の点数アップにつながるはずだから、今回は高校数学の確率分野の独立って言葉について少し記事にしてみようと思う。
例題とか問題はない話だけの記事だけど、しっかり内容を理解して欲しい。
試行
さいころを振るとか、コインを投げるとか実験や観察すること
事象
試行によって起こる事柄
独立な試行
\(\small{ \ 2 \ }\)つの試行があり、それぞれの試行の結果が他方の試行の結果と無関係である試行
独立事象の乗法定理
\(\small{ \ P\mathrm{(A\cap B)}=P(\mathrm{A})P(\mathrm{B}) \ }\)
従属事象の乗法定理
\(\small{ \ P(\mathrm{A\cap B})\neq P(\mathrm{A})P(\mathrm{B}) \ }\)
\(\small{ \ P(\mathrm{A\cap B})= P(\mathrm{A})P_\mathrm{A}(\mathrm{B}) \ }\)
試行と事象
まずは言葉のチェックから始めよう。試行っていうのはさいころを振ったり、コインを投げたりする実験や観察(動作)のこと。これに対して、事象は試行によって起こる事柄(結果の一つ)のこと。例えば、さいころを振るっていう試行に対して、\(\small{ \ 1 \ }\)の目が出るっていうのが事象になる。
なんでこんなことを確認するかということ、事象と試行を混乱しがちなんだ。上の説明だけ聞けば間違えることなんてないと思うけど、「排反事象」「独立試行」「独立事象」なんて言葉になると「?」ってなる人も多いと思う。
今回はこのあたりのことをきちんと整理したいから、まずは基本になる試行と事象を確認したってこと。それじゃ次に進んでいこう。
独立な試行
\(\small{ \ 2 \ }\)つの試行があって、それぞれの試行の結果が他方の試行の結果と無関係である試行のことを独立な試行っていうんだ。
表裏の出方に注目して、\(\small{ \ 100 \ }\)円玉と\(\small{ \ 10 \ }\)円玉を投げるとき、\(\small{ \ 100 \ }\)円玉を投げる試行を\(\small{ \ T_1 \ }\)、\(\small{ \ 10 \ }\)円玉を投げる試行を\(\small{ \ T_2 \ }\)とすると、\(\small{ \ 100 \ }\)円玉と\(\small{ \ 10 \ }\)円玉の表裏の出方は互いに影響がないから、これらの試行は独立になる。
これに対して、\(\small{ \ 10 \ }\)本中\(\small{ \ 1 \ }\)本の当たりが入っているくじを\(\small{ \ \mathrm{A} \ }\)君と\(\small{ \ \mathrm{B} \ }\)君がこの順に引くとき、\(\small{ \ \mathrm{A} \ }\)君がくじを引く試行を\(\small{ \ T_1 \ }\)、\(\small{ \ \mathrm{B} \ }\)君がくじを引く試行を\(\small{ \ T_2 \ }\)とすると\(\small{ \ \mathrm{A} \ }\)君が当たりを引くときと引かないときで、\(\small{ \ \mathrm{B} \ }\)君の試行は異なる(\(\small{ \ \mathrm{A} \ }\)君が当たりを引くと\(\small{ \ \mathrm{B} \ }\)君はハズレを引くことに、\(\small{ \ \mathrm{A} \ }\)君がハズレを引くと\(\small{ \ \mathrm{B} \ }\)君は当たり、またはハズレを引くことになる)からこれらの試行は独立とは言えないんだ。
上の例の\(\small{ \ 2 \ }\)つの試行が独立か独立でないかっていうのはなんとなくわかるよね。高校数学での試行の独立は直感的に判断できるんだ。
独立事象と従属事象
次に事象の独立について考えてみよう。
\(\small{ \ 2 \ }\)つの事象があって、このうちの\(\small{ \ 1 \ }\)つの事象が起こる・起こらないに関わらず他の事象の起こる確率が変わらないとき、これらの事象は互いに独立であるっていうんだ。
これに対し、\(\small{ \ 2 \ }\)つの事象があって、このうちの\(\small{ \ 1 \ }\)つの事象が起こる・起こらないによって他の事象の起こる確率が変わるとき、これらの事象は互いに従属であるっていうんだ。
これだけだと、試行の独立と同じ感じがするけど、実は試行の独立と違って、事象の独立は簡単に見分けることができないんだ。
ちなみに事象の独立・従属は確率分布の範囲で数学Aの確率の範囲外になるけど、そう難しい話じゃないから、この下の記事を読んで理解してほしい。確率分布を取り扱わない学校も多いから、先生も単に独立って言葉を使って,「試行の独立」と「事象の独立」をきちんとわかるように分けて話していない先生もいるからね。
事象の独立については\(\small{ \ P(\mathrm{A\cap B})=P(\mathrm{A}) \cdot P(\mathrm{B}) \ }\)が成り立つとき独立(独立事象)、成り立たないとき従属(従属事象)っていうんだ。
従属事象は\(\small{ \ P(\mathrm{A\cap B})\neq P(\mathrm{A})P(\mathrm{B}) \ }\)が成り立つんだけど、これは\(\small{ \ P(\mathrm{A\cap B})= P(\mathrm{A})P_\mathrm{A}(\mathrm{B}) \ }\)とも書けて、この後学習する条件付き確率に結びついていく。この\(\small{ \ P(\mathrm{A\cap B})= P(\mathrm{A})P_\mathrm{A}(\mathrm{B}) \ }\)って式は確率の乗法定理って呼ばれる式でもある。 条件付き確率の考え方や問題文の読み取り、カルノー図の利用について詳しく解説しています。 続きを見る
条件付き確率
でも今回はそこまでは触れずないから、独立についてしっかりと理解していこう。
例えば「コインを投げて表が出る」と「さいころを振って\(\small{ \ 3 \ }\)の目が出る」の\(\small{ \ 2 \ }\)つの事象があるとき、コインの表が出たからといって、さいころの\(\small{ \ 3 \ }\)の目が出やすくなるってことはないよね。だから独立事象なんだけど、これってさっきの独立な試行と何が違うのって思ったかもしれない。
確かにこの「コインを投げて表が出る」と「さいころを振って\(\small{ \ 3 \ }\)の目が出る」の\(\small{ \ 2 \ }\)つの事象はそもそも「コインを投げる」と「さいころを振る」って試行が独立だから、その結果の事象も独立になる。
じゃあ次の場合を考えてみよう。
さいころを\(\small{ \ 1 \ }\)回振る試行に対して「\(\small{ \ \mathrm{A} \ }\):奇数の目が出る」と「\(\small{ \ \mathrm{B} \ }\):\(\small{ \ 2 \ }\)以下の目が出る」の\(\small{ \ 2 \ }\)つの事象だとどうだろう。
試行の独立は\(\small{ \ 2 \ }\)つの試行についてだったけど、事象は試行の結果だから、\(\small{ \ 1 \ }\)つの試行で事象は複数あるからね。
奇数の目が出る確率は\(\small{ \ P(\mathrm{A})=\displaystyle\frac{3}{6} \ }\)
\(\small{ \ 2 \ }\)以下の目が出るのは\(\small{ \ P(\mathrm{B})=\displaystyle\frac{2}{6} \ }\)
奇数で\(\small{ \ 2 \ }\)以下の目が出るのは\(\small{ \ 1 \ }\)の目が出ることだから\(\small{ \ P(\mathrm{A \cap B})=\displaystyle\frac{1}{6} \ }\)
だから\(\small{ \ P(\mathrm{A\cap B})=P(\mathrm{A}) \cdot P(\mathrm{B}) \ }\)が成り立つよね。この式が成り立つってことは、この\(\small{ \ 2 \ }\)つの事象は独立ってことが言えるんだ。
じゃあ次のさいころを\(\small{ \ 1 \ }\)回振る試行に対して「\(\small{ \ \mathrm{A} \ }\):奇数の目が出る」と「\(\small{ \ \mathrm{B} \ }\):\(\small{ \ 3 \ }\)以下の目が出る」の\(\small{ \ 2 \ }\)つの事象だとどうだろう。
奇数の目が出る確率は\(\small{ \ P(\mathrm{A})=\displaystyle\frac{3}{6} \ }\)
\(\small{ \ 3 \ }\)以下の目が出るのは\(\small{ \ P(\mathrm{B})=\displaystyle\frac{3}{6} \ }\)
奇数で\(\small{ \ 3 \ }\)以下の目が出るのは\(\small{ \ 1 \ }\)か\(\small{ \ 3 \ }\)の目が出ることだから\(\small{ \ P(\mathrm{A \cap B})=\displaystyle\frac{2}{6} \ }\)
\(\small{ \ P(\mathrm{A\cap B})\neq P(\mathrm{A}) \cdot P(\mathrm{B}) \ }\)になるから、この\(\small{ \ 2 \ }\)つの事象は独立じゃない。つまり従属ってことになるんだ。
今挙げた独立事象と従属事象の例は、ぱっと見ただけだと独立か従属かって気づくのは難しいよね。試行の独立は直感的に判断できたけど、事象の独立は直感的に判断するのは難しいんだ。
独立には「試行の独立」と「事象の独立」があるから注意しよう。
排反と独立
最後によくみんなが混同して間違えやすいところについて話をするね。
排反って言うと和を使う、独立って言うと積を使うってイメージがある人も多いと思う。
まずはこの「排反」と「独立」をきちんと理解しておかないといけない。
数学\(\small{ \ \mathrm{A} \ }\)の確率では、排反って言うと「排反事象」のことで、独立って言うと「独立試行」のことを言ってるんだ。だから事象と試行で全然違う話になるんだけど、「排反」と「独立」って言い方をするから混同しがちになる。
排反事象は\(\small{ \ 2 \ }\)つの事象が同時に起こらないときのことだからね。
それじゃ\(\small{ \ 1 \ }\)組のトランプから\(\small{ \ 1 \ }\)枚カードを引く試行で考えてみよう。
事象\(\small{ \ \mathrm{A} \ }\)「エースを引く」
事象\(\small{ \ \mathrm{B} \ }\)「絵札を引く」
事象\(\small{ \ \mathrm{C} \ }\)「ハートを引く」
事象\(\small{ \ \mathrm{A} \ }\)と事象\(\small{ \ \mathrm{B} \ }\)は同時に起こることがないよね。だから排反(排反事象)って言えるんだ。だけど、事象\(\small{ \ \mathrm{B} \ }\)と事象\(\small{ \ \mathrm{C} \ }\)は「ハートの絵札を引く」と事象\(\small{ \ \mathrm{B} \ }\)と事象\(\small{ \ \mathrm{C} \ }\)が同時に起こるから、排反とは言えないんだ。
排反は「袋の中から玉を\(\small{ \ 4 \ }\)個取り出すとき、赤玉を\(\small{ \ 3 \ }\)個以上とる確率」のような問題に利用する。「赤玉を\(\small{ \ 3 \ }\)個とる」事象と「赤玉を\(\small{ \ 4 \ }\)個とる」事象は同時に起こることはないから排反だよね。
だから「赤玉を\(\small{ \ 3 \ }\)個以上とる確率」=「赤玉を\(\small{ \ 3 \ }\)個とる確率」+「赤玉を\(\small{ \ 4 \ }\)個とる確率」になるんだ。排反である確率は絶対同時に起こらないから確率の和を利用することになるからね。
これに対して独立は「試行の独立」の場合がほとんどだから、「コインを投げて、袋から玉を\(\small{ \ 1 \ }\)個取り出す」試行で「コインの表が出て、袋から赤玉をとる」確率を求める場合、「コインの表が出る事象」と「袋から赤玉をとる事象」は「コインを投げる」「袋から玉をとる」の試行が独立だから求める確率は(コインの表が出る確率)×(赤玉をとる確率)になる。
つまり積を利用することになるんだ。